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「おおかみこどもの雨と雪」

細田守監督の「おおかみこどもの雨と雪」を観てきた。
「時をかける少女」「サマーウォーズ」と観てきて、新作は一応劇場で観たい監督だ。
ときかけは摩訶はまったので、サマー〜は期待大で観にいったのだが、私としては、ちょっと肩すかしだったわけだが、悪くはなかったので。
サマー〜は、ときかけがあったので、期待が大きすぎたのだと思う。

で、おおかみこども〜であるが…
悪くはなかった。良く出来ていた。出来としては、1番「ときかけ」2番「おおかみこども〜」3番「サマー〜」というところか。
私の勝手な想像だが、多分日本男児の方々にはかなり支持されるのではないか?
とくに宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」をこよなく愛する男性に。
つまり私としては、細田守お前もか?!な感じ…

前半、まさに自分もやってきた子育てを、具体的に細かく延々と見せられる。
母親一人で、しかもおおかみこどもだから、普通の人間の子よりもさらに大変だ。誰にも子育ての悩みを相談することもできないし、誰にも愚痴もこぼせない。
しかし、彼女は常に笑顔を絶やさず、キレもせず、怒鳴りもせず、子どもたちに接し、家事も家の修理も自分の仕事も、おまけに農作業も、一人でこなす。
泣き虫で甘えん坊の弟には、小さいときはこれ以上もなく優しい母親だ。
そして、気づくと、彼は亡き父親そっくりな少年へと成長している。
やがて彼は、狼として生きることを選択し、大嵐の日、巣立ってゆくのだが、そのとき!母は、笑って彼を見送るのだ。「生きるのよ!」とただひとこと言って。
かつ、この一連を、姉の雪のナレーションで語らせている!
なぜ「!」なのか、殿方にはわかるまい。

大嵐の日、姉の雪を迎えにくるよう学校から連絡をもらい、レインコートに身を包み出かけようとするのだが、登校拒否状態で家にいた雨が家から出てしまったのに気づく。そして彼女は雨を捜しに、学校ではなく山のほうに行ってしまうのだ。
結局、雪は誰にも迎えに来てもらえないまま、学校で一夜を明かすことになったはずなのだが、そのへんは映画ではスルー。
この日は、雨にとっても雪にとっても、人生において重要な日になるのだが、そのことと、私が疑問に思った点とは別の事柄だ。
にもかかわらず、この日のことを、雪は、なんのわだかまりもなく、母と弟の出来事として、実に明るく晴れがましいくらいな声で語るのだ。
有り得ない!

雨と母親にはひどくこだわっているのに、雪をはじめとしたその他の登場人物、韮崎(韮山?)のじいさんもそうだし、草太と草太の母親など、あまりにもステレオタイプだ。百歩譲って、周りの人々は仕方ないとしても、雪もそれではあまりにもいただけないのではないか。
雪の感情や内面への掘り下げが、あまりにも浅いので、私は軽い憤りさえおぼえた。

これは、細田守の理想の母親像をあますところなく提示した作品なのであろう。

がしかし、それでも映画としては、悪くない。
良く出来ていたと思う。
伝統的な日本男児の皆さまは、観にいらっしゃるとよろしいと思います。
必ずや、共感されることと思います。
by nyoirin | 2012-08-05 13:10 | マンガ・アニメ

2015.4.1.より、身の回りの小確幸(小さいけれど確かな幸せby村上春樹)を見つけてつぶやきます。


by nyoirin