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波多野睦美&つのだたかし「懐かしいイギリス古謡とエリザベス朝のリュートソング」

 先週6月1日金曜日、東京・目白の自由学園明日館で、波多野睦美(メゾソプラノ)・つのだたかし(リュート)による「懐かしいイギリス古謡とエリザベス朝のリュートソング」というコンサートが開かれた。
 明日館は、かのフランクロイド・ライトの直弟子である遠藤新による由緒ある建物だ。前日の嵐が嘘のような、うつくしい初夏の夕べにふさわしい、趣のある明日館で、私は、めったにない出会いを体験した。
 若い頃から、数々のコンサートに足を運んだが、福引き同様「当り」のコンサートに出会う機会は多くはない。しかし、今宵のコンサートは間違いなく「当たり」の、しかも「大当たり」のだった。

 コンサートの前半は、16世紀イギリスの作曲家(私の大好きな)ジョン・ダウランドの作品とイギリスの古謡で、休憩をはさんだ後半は武満徹とダウランドと同時代のイタリアの音楽というプログラムだった。
 第1曲目、ダウランド作「甘い愛が呼んでいる」の最初の「Come again〜」の透きとおるような「声」が降ってきたときは、あまりのことに一瞬かたまってしまった。波多野睦美&つのだたかし「懐かしいイギリス古謡とエリザベス朝のリュートソング」_c0009212_1633283.jpg
 私は、いっぺんで波多野さんの声に魅了されてしまった。深くて奥行きがあって、なにより高音のピアニッシモが格別だ。一曲一曲を説明してくださるその話し方も内容も、彼女の人間的な深みのようなものを感じさせた。それが、彼女の歌にも表われているのだろう。「スカボロー・フェア」では、涙がこぼれそうになった。歌というものの持つ「力」をあらためて確認するような思いだった。歌はやっぱりすごい、歌は信じられる、と思った。これは、なにより彼女の「力」でもあるのだと思った。私は絵描きの端くれで、もちろん「絵」を信じているのだが、「音楽」には特別の憧憬を持っている。ときどき「やっぱり音楽にはかなわないな〜」と思うことがある。こんなコンサートに出会ってしまった晩には、殊更に。
 そう思ってしまうのは、絵画であることのせいではなく、なにより私の力不足のせいなのだが。
 リュートのつのださんが、途中、当時のダンス(ガリアード?)のステップを自ら立ち上がって披露して下さったのも、とてもチャーミングだった。
 
 まれにみる幸せなときを過ごすことができたことに、感謝感謝の夜だった。

 写真は、波多野睦美・つのだたかしで、「Sorrou Stay」
by nyoirin | 2007-06-05 16:27 | 音楽

2015.4.1.より、身の回りの小確幸(小さいけれど確かな幸せby村上春樹)を見つけてつぶやきます。


by nyoirin