神山健治脚本・監督の「サイボーグ009」を観てきた。
初代の009TVシリーズをリアルタイムで観ていた、もっと言うなら、石ノ森章太郎(石森章太郎当時)の漫画をリアルタイムで読んでいた世代としては、最初、観ることに躊躇するところがあった。
当時、009ことジョーが好き過ぎて、夢に何度見たことか!
003ことフランソワーズとの、あの信頼関係!あの愛!
永いブラックゴースト団との戦いに勝利し、新たに天使編が始まったところで、中断され、必ずや続きを描いてくれるだろうと信じて待っていたが、ついにその願いは果たされないまま、言わばずっと009を引きずって生きてきたとも言える。(ちょっと大げさ(笑))
しかし、ネットで偶然観た予告編では、私の記憶する009たちとは違う面持ちの彼らが映し出されていた…
だが一方で、神山・攻殻機動隊を激しく愛する私としては、彼なら、009で何をどう表現するだろうかと、興味もあった。
悩んだ末、観ることにした。
世界観は、攻殻機動隊S.A.C.のそれに近かったと思う。従って、まだ電脳化されてない私は外部記憶とリンクしていないので、少し理解が追いつかないところがあった。
今一度観なくては、わからないかもしれない。
映像は、素晴らしく美しかった。とくに、ジョーの加速装置起動中のときと、それぞれのテレポーテーションのときの表現は秀逸。
クライマックスでのジョーがテレポーテーションで現れるシーンでは、キャーっ!!
秒殺されました、わたくし。
また、ジェットとハインリヒの装備の意匠がよりスタイリッシュでより機能的で、原作が描かれた当時のものとは違って、かなりかっこよくなっていた。
とくにハインリヒの、まるで格闘の殺陣のような動きで攻撃するのが、これまたかっこよかった。
ただ、全員もう少し、暖かみというか人間味というかが、オリジナルではあったのではないか(これはキャラクターデザイナーの麻生我等のせいかもしれないが)。
フランソワーズは、原作ではバレリーナのはずだが、本作ではそのへんは言及されていない。
これは神山監督の好みなのかもしれないが、フランソワーズの最初の登場シーンなどは、まるで「素子だろー!!」だった。もちろん素子に比べれば、ずっと柔らかみは感じられたが、私の記憶の中のフランソワーズとは似て非なるものだった。
また、考えてみれば、攻殻の公安9課のメンバー構成とよく似てるではないか。
ギルモア博士は荒巻課長(部長)、紅一点のフランソワーズと素子、バトーはジェロニモ、さしずめジョーはトグサのポジションか(?)、イワンがタチコマの代わりだし…、イシカワ、サイトー、ボーマ、パズは、それぞれピュンマ、ハインリヒ、チャンチャンコ、ジェット、みたいな?(あ、これだとグレートがいない!あ、プロトくんということにしておこう)
ストーリーはまず、2013年の現代、世界各地で、高層ビルを狙った連続爆弾テロが起るところから始まる。その犯人たちには、とくに繋がりは見出せない。しかしやがて、その何人かが「彼の声」なるものを聴き、それに従ってテロを起こしたと証言しはじめる。…
「彼の声」とはなんなのか。その「彼」とは誰なのか。人類とはなんなのか。初めからやりなおすとは?…
私はもしかしてこれは、神山監督なりの「天使編」の答えなのかもしれないと思った。
だから、あまりにも壮大なテーマに取り組んでいるわけで、2時間あまりの映画では、描ききれていない気がした。
OVAになってしまうのかもしれないが、できれば深夜枠でもいいから、1クールか2クールくらいかけて、じっくり語って欲しい気がした。
どうかなあ?・・・